隣人の倉敷人妻風俗嬢

多分、彼女は僕の顔を知らないんだろうなぁと思う。
毎朝顔を合わせるわけではないし、本当にたまたま僕が勝手に顔をみただけだし。
僕が仕事を終え、疲れ果てて帰っていると、アパートまでもう少しというところで、隣の彼女が部屋から出てきた。
あぁ、あれがお隣さんなんだなぁと思った。
そして階段を下りてきた彼女とすれ違った。
ブスではないがキレイでもない。
まぁふつー。
これが第一印象だった。

別にその時から彼女のことが気になっていたわけではない。
ただこれもまた偶然である晩、先輩に終電ギリギリまで付き合わされ、嫌だなぁと思いつつ駅までの近道であるホテル街を抜ける道を選択した時だった。
どう考えても見覚えのある顔がホテルから出てきた。
彼女は誰かと携帯電話で話している様子で、初めてその時声を聞いた。
「マジゲロマズ」
僕はビックリして転んだ。
が、彼女は僕を気にしている素振りはなかった。
そして、僕が体勢を立て直している間に、彼女が喋っていたことは時間ギリギリまで胸を揉まれてむかついたこと、ちょっと値切られかけたこと、今すぐ迎えに来て欲しいこと。
デリヘルなんだ。
こんな言葉があるのか知らないが、これが第二印象だった。

そんなこんなで僕の部屋の隣では人妻風俗嬢が暮らしている。
多分、アパートでは禁止されている猫と二人暮らしで。

今夜もまたお隣さんの猫が壁に向かって爪をカリカリとしている。
壁というのは勿論僕の部屋がある方の壁だ。
爪研ぎを立てかけてあるのか、もう諦めて壁をカリカリさせているのか。
どちらにせよ、多分このカリカリの被害者は僕だけである。

このアパートはペット不可の物件であることは間違いない。
だって、僕も実家にいた猫を連れてこようか悩んだくらいなのだ。
でも不可なので、連れてくることをやめた。
いざ入居してみると、隣の部屋には猫がいた。
嘘だろ!と内心叫んだ。
よーく耳を澄ませると、他の部屋では犬を飼っている人もいるだろう。
多分、インコか何かを飼ってる人もいる。
ゆるせないなぁと思いながら、最初の頃はイライラして眠っていた。

ということでまぁ、カリカリの被害者が僕だけならいいかと思って別段文句を言わないようにしている。
いや、言おうかなと考えた時期もあった。
しかし相手はあの「マジゲロマズ」な人妻風俗嬢だ。
怖いし、怒られるのは会社だけで十分だ。
最近なんて、猫がカリカリし始めると、おっもうこんな時間だと思って寝る支度をする。
騒音被害を生きたアラームとして捉えた僕の機転に拍手を送りたい。

そんなこんなしている内に夏になった。
もちろん、近隣住民との交流なんて全くなく別段代わり映えのない日々を代わり映えなくただただ平凡に過ごしていた。

人妻風俗嬢である彼女は倉敷の街で働いているようだ。